
医療関係者専用サイト> ボツリヌス療法 基本編> 眼瞼痙攣・片側顔面痙攣> 対談:ボトックス®の50単位製剤登場による患者負担軽減



眼瞼痙攣とは、眼輪筋の過度な収縮により不随意な閉瞼や瞬目が生ずる疾患であり、片側顔面痙攣とは顔面神経の被刺激性亢進により、顔面筋が発作性、反復性かつ不随意に収縮する疾患です。患者さんが訴える症状としては、まぶしくて目を開けていられない、片側の顔面がピクピクひきつるなどの症状があります。患者さんは、受診してもドライアイ・チック・眼部ミオキミア・うつ病などと診断されてしまうことがあり、適切な診断・治療がなされないまま、不自由な生活を強いられることが少なくありません。
この病気の治療法のひとつにボツリヌス療法があります。ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンを注射することによって、痙攣などの原因となっている神経の働きを抑え、筋肉の緊張をやわらげ、症状を改善する治療法です。A型ボツリヌス毒素製剤には従来100単位製剤しかありませんでしたが、2009年2月に50単位製剤が発売され、患者さんの費用負担が減ったことで、以前より治療が受けやすくなりました。
今回は、ボツリヌス療法の第一人者である井上眼科病院院長の若倉雅登先生と眼瞼痙攣の患者さんである東海林雅子さんに、病気の治療について話し合っていただきました。
【東海林さん】ボツリヌス治療を受ける前の悩みは「とにかく目が開けていられない」という症状による、日常生活の支障でした。買い物に行くにも付き添いがないと行かれない、買うものを選べない状態でした。自転車に乗っても急に目が開かなくなるので、止まっている車にぶつかったこともあります。家で台所仕事をしていても途中で包丁を持つ手が止まったり、目が開けられない状態の顔を友人に見られるのが嫌で、外出の回数も減りました。視力を失ったわけではないので、無理やり手で瞼を押し上げれば見えますが、自分の意志で自由に開けることは困難な状態でした。ボツリヌス治療に出会うまでに、大学病院の眼科から脳神経内科を紹介され、毎月経過観察するだけで、症状はどんどん悪くなっていきました。10年ほど前に、新聞で眼瞼痙攣という病気のことを知り、私の病気はこれではないかと思い、記事に紹介されていた井上眼科を受診して、眼瞼痙攣と診断されました。そこで、ボツリヌス治療を受けることになったのが10年前です。
【若倉先生】まぶしくて目が開けられないのが眼瞼痙攣、瞼のまわりや頬が勝手にピクピクと動いてしまって止まらないのが片側顔面痙攣です。他の眼疾患にみられる症状との違いは、「物にぶつかる」「集中力が低下する」が挙げられます。いずれも患者さんにとっては大変つらく、生活の質を著しく落とす疾患ですが、医師の間でもあまり知られていないのが現状です。
私のところを受診する前に正確な診断がついていた患者さんは15%くらいしかいないという検討結果も得ています。
また、患者さんは何科を受診するべきかが分からず、1~2軒受診しても正しい疾患名が診断されず、症状が改善されないまま、治療を諦めてしまうこともあります。そのため、本人はつらいのに、周囲の人から理解されにくいため、だんだん抑うつ感が出てきてしまう患者さんが多くいらっしゃいます。
【若倉先生】治療効果は検査データで示せないため、患者さんの満足度で測らざるをえません。
眼瞼痙攣では、1回目の注射で「劇的に効いた、こんなすばらしい治療があるとは思わなかった」とおっしゃる患者さんが3割、「前よりはよくなった」が5割、「効かない」とおっしゃる患者さんが2割です。ただ、この2割の方も2~3回繰り返すことで、違和感が減って効果が現われてきます。

片側顔面痙攣では、8~9割の患者さんがよくなったと評価されます。
患者さんの満足度については、「生活の質が改善された」「目(瞼)や顔の症状が気にならなくなった」という声が多くあります。
【東海林さん】若倉先生に診断していただきましたので、「これで治る」という気持ちで、安心してボツリヌス治療を受けることができました。あれほど悩んでいた症状が回復して、注射後2~3日しての診察で先生にお会いした瞬間、「先生、治りました!」と申し上げたのを思い出します。
治療後の改善度合いについては、治療を受ける患者さんたちの目的や期待度によって異なるようです。「瞼に注射をする」「同意書に署名をする」などに伴う不安については、医師からの丁寧な事前説明をしっかり理解することで問題なく解消でき、前向きに治療に臨むことができると思います。
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